クライストの『ロベール・ギスカール』を採りあげて、「クライストにおける政治」をテーマにした論文を書こうと考え、『ギスカール』を再読したが、この作品だけで論じるのは難しいかもしれない。
クライストにおける「カタストロフ」と「民主制」の関係。そこに「演劇」と「死者たち」がどう関わるのか。つまりクライストとギリシャ悲劇、ということにもなる。さらにはクライストとそれらの問題の距離が、クライストと彼が直面していた現実との関係にどのように関わっているのかも無視できない。
クライストは何らかの理念を基盤とした民主制を構想していない。大地はつねに揺れているし、おそらく揺れているしかない。そこに成り立つ独自の秩序の核には、「ひとつのものが同時に複数である」ことが関わっている。だからルソーが重要になる。クライストはルソーと同様、理念よりも関係性のありようを問題にしている。クライストをナショナリズムやファシズムで切ってしまうのは、1)彼には理念よりも大事なものがあった、2)ひとつの理念が読み取られるとしても、それは事態の一面に過ぎない、という二重の意味で、不十分だ。
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