1.
カール・シュミット 国家以前の法
法(ノモス)=空間を構成すること=秩序をつくること
場所確定(Ortung)=秩序(Ordnung)
「大地は、神話的な言語において、法の母と名づけられる。」
「ノモスは、ネメイン[nemein]から、すなわち『分配すること』および『放牧すること』を意味する言葉から由来する。したがってノモスは、そこにおいて民族の政治的および社会的な秩序が空間的に明白になる直接的な形態であり、また放牧地の最初の測定と分配である。すなわち陸地取得であり、また、陸地取得に存しそこから生ずる具体的な秩序である。カントの言葉によれば『土地における私のものとお前のものとを分配する法律』であり、あるいは他のよく特色を示す英語によれば、権原[radical title]である。ノモスは、大地の地所を一定の秩序において区分し場所確定する尺度であり、それと共に与えられた政治的社会的宗教的秩序の形態である。」
「ノモスは、居住地、ガウ、牧場のことである。Nemus[森]という同根の言葉は、森[Wald, Hain, Forst]として、宗教儀式的な意味をもちうるのである。」
「根源的な意味でのノモスは、まさに、法律によって仲介されない法/権利[Recht]の能力の完全なる直接性なのである。すなわち構成的な歴史的な出来事なのであり、また、正統性の行為なのである。」
「ヘラクレイトスやピンダロスの表現における、『ノモス』というギリシャ語が、空間的に具体的な構成的秩序行為および場所確定行為、すなわち秩序構成的秩序[ordo ordinans]から変えられて、[…]『法律』という言葉でもってドイツ語化される限りにおいて、その解釈をめぐる争いのすべては見込みのないままであり、言語学的に鋭い洞察もすべて非生産的であることは当然である。[…]ヘラクレイトスやピンダロスの言葉は、書かれたまた書かれていない種類のその後に続いて生じてくる諸規定はすべて、その能力を、空間を秩序づける構成的な原行為の内的な尺度から得てくるということを、実際には述べているだけなのである。かかる原行為がノモスなのである。」
「法と秩序とは、陸地取得のかかる起源において、同一のものであり、そして、この点において、すなわち場所確定と秩序が同時に起こっているその発端において、互いに分離できないのである。」
(カール・シュミット『大地のノモス』、新田邦夫訳、慈学社、2007年)
2.
一方で、ドゥルーズ。
「けれども、ノマド的[遊牧的]と呼ばなければならない配分、すなわち、所有地もなければ囲いも限度もないノマドなノモスについては、話はまったく違ってくる。この場合には、もはや配分されるものを分割するという事態はなく、むしろ、限度のない、少なくとも明確な限界はない開かれた空間のなかでおのれを配分するものどものを割りふるという事態があるのだ。何かが誰かに帰属したり所属したりするなどということはまったくなく、かえって、すべての人物が、可能なかぎり大きな空間を覆うように、あちこちに配置されるのである。人生の深刻さが問題になるときでさえ、定住的な空間とは対照的な遊びの空間、定住的なノモスとは対照的なゲームの規則が語られるであろう。ひとつの空間を満たすということ、空間においておのれを分割するということは、空間そのものの分割とはきわめて異なるのである。」
(ジル・ドゥルーズ『差異と反復』、財津理訳、河出文庫、2007年)
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