ハインリヒ・フォン・クライストによる物語「チリの地震」(8)
この間に午後が近づき、あれこれと夢中で話す避難民たちの心が、大地の震動がひいたので、少し落ち着きを取り戻すやいなや、知らせが広まってきた、ドミニコ会の教会、地震が被害を与えなかった唯一の教会で、特別なミサが修道院長自身によって執り行われ、天にこれ以上の不幸から守ってくれるよう願いを捧げる、と。民衆はすでにあらゆる方面から飛び出し、幾筋かの流れとなって町へ急いでいた。
ドン・フェルナンドの集まりで問いが投げ上げられた、この聖祭に参加し、あらゆる者がなす列に加わるべきではないか? ドニャ・エリーザベトは思い出させようとした、いくらか心を締め付けられつつ、どんな災厄が昨日教会で生じたことでしょう。こうした感謝の式典は繰り返し行われ、あとになるほど感情に、危機はより遠くへ過ぎ去って、明るく穏やかに身をゆだねることができるでしょう。
ホセファは意見を述べた、いくらか熱狂したようにすぐに立ち上がって、わたしはこの顔を造物主の御前の土に押しあてたい衝動を今ほど活き活きと感じたことはありません、彼が理解不能で崇高な力を示されている今ほど。
ドニャ・エルヴィーレは活き活きとした様子でホセファの意見に賛意を表した。彼女はミサを聴くべきという考えにこだわり上げ、一行を率いるようドン・フェルナンドを促し上げ、その上で全員が、ドニャ・エリーザベトを含め立ち上がった。
けれどもドニャ・エリーザベトは、胸を激しく動悸させ、ささいな出発の準備もためらいがちで、どうしたのかと尋ねても、わたしも自分のなかにどんな不幸の予感があるのかわからないと答えるので、ドニャ・エルヴィーレは彼女を落ち着かせ、自分と具合の悪い父のもとに残るよう言った。
ホセファは言った、ではドニャ・エリーザベト、この小さな男の子を引き取ってもらえますか、もうまたこうしてわたしのところに来てしまったのです。喜んで、とドニャ・エリーザベトは答え、彼を捕まえようとしたが、子供は自分に生じた不正に悲鳴を上げ、決して承諾しなかったので、ホセファは微笑みながら言った、わたしがこの子を手元におきます、そして彼女はキスをして子供を静かにさせた。するとドン・フェルナンドは、気品に溢れ優美なこの振舞いを非常に気に入って、ホセファに腕をさしのべた、ヘロニモは小さなフィリップを抱え、ドニャ・コンスタンツェを先導し、この集まりに入っていた残りの構成員があとに続き、こうした秩序で列は町へと向かった。
注:ドミニコ会
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