2010年9月27日月曜日

「物語るひと」

1.

Düsseldorf, 2003/10/12/21:08































2.

 一年間ドイツに留学し、帰ってきてからちょうど6年が経過した。この間、一度もまともに留学期間を振り返ってこなかった。日本に戻っても毎年のようにドイツを訪れたから、思い返す必要を感じなかった。今回は思い立って始めたが、やはり気は乗らず、ろくな総括になっていないことは、みていただければわかる。

 「物語はみずからを出し尽くしてしまうということがない」(ベンヤミン)。ドイツの時間と経験は、保存しておき、ときどき再利用すればいいのだろうと思っている。

 写真をみたり、あるいはたんにドイツのことを思いおこすと、匂いや空気がよみがえってきて、現在の時間を一瞬離れられるのは貴重なことだと思う。それはドイツだけでなく、実家でもギリシアでもベトナムでも同じである。

 一人でもなにかすればいいのにしないまま、妙に退屈を感じ、今いる場所から離れたがり、できるかぎりたくさんの知らないものや知らない場所を経験したがっていたのが自分だったなと思う。

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