2011年3月3日木曜日

リズムを断ち切らないこと

 村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』を読んだ。実用的な本だ。

早く走りたいと感じればそれなりにスピードも出すが、たとえペースを上げてもその時間を短くし、身体が今感じている気持ちの良さをそのまま明日に持ち越すように心がける。長編小説を書いているときと同じ要領だ。もっと書き続けられそうなところで、思い切って筆を置く。そうすれば翌日の作業のとりかかりが楽になる。アーネスト・ヘミングウェイもたしか似たようなことを書いていた。持続すること――リズムを断ち切らないこと。長期的な作業にとってはそれが重要だ。いったんリズムが設定されてしまえば、あとはなんとでもなる。しかし弾み車が一定の速度で確実に回り始めるまでは、継続についてどんなに気を使っても気をつかいすぎることはない。 [文春文庫、17−18頁]

生命にリズムを与えることは難しい。機械的なリズムを無理矢理押し付けても人間の身体や精神はついていけない。身体や精神が返してくるフィードバックを常に正確に感じ取りながら(「内なる声」を無視しないこと)、少しずつリズムをつくっていかなければならない。また、かたちの落ち着いたリズムであっても、絶えず点検を怠らず、メンテナンスし続けなければならない。

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