2011年7月8日金曜日

[読書A2]揺さぶられる秩序

ハンス=ティース・レーマン「揺さぶられる秩序 ―アンティゴネ・モデル」

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政治的なものの境界は時間である。政治は生者の時間を制御できるが、死者と未生者の時間は制御できない。[…]法に対する二つの立場の対立、悲劇におけるその衝突、といったことは、うわべにすぎない。問題はポリスの論理を宙吊りにすること、その知のあり方を揺さぶること、その基盤を失わせることである。それによって、政治的行為とその暴力に「真理」の名を与えることを、不可能にすることである。[33頁]

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芸術、演劇は、言葉によって、政治的なものをその境界で中断させる。しかも政治的なものをある種の否定によって抹消するわけではない。[…]演劇は秩序を崩壊させると同時に崩壊させない。演劇は秩序を「濁った」ものとして、揺らぐものとして見せる。[…]秩序が揺さぶられる、とは、秩序が揺らぐものとして知られるということ、あるいはむしろ、揺らぐもの、揺さぶるべきものとして経験されるということである。[34頁]

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演劇あるいは悲劇の政治的テクストは、政治的に正しいものとは何か、という問題に直接的には介入しない。[…]公的な憎しみを共有しない、誰が「敵」か定義することを第一の基準にしない、それはつまり、すでに述べたように、「政治的なもの」が設定する時間的な枠組みから逃れる、ということである。生者の時間を越えた愛を共有することが、友敵図式を問い直す。そして法的政治的手続きそれ自体の有効性を問い直す。法的政治的手続きとは、結局のところ常に、限定された、また限定する権限をもった、いわゆる有権者[声をあげる権利をもつ者たち]にその正当性を負っているのだから。[36頁]

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