2011年7月12日火曜日

[語学A2]相良『文法』

 語学を教える際に、「これはこういう規則だから覚えろ」というのは、できるだけ言いたくない。と、すべての語学教師は思うべきだ。

 第一にそれでは覚えづらい。つまらないし、ひっかかりがなさすぎる。

 第二にそれでは言葉が現在の形になった必然性、歩んできた歴史がわからない。それどころか、言葉に歴史が存在すること自体を感じられない。

 相良守峯『ドイツ文法』は、言葉の歴史を感じさせる文法書だ。ドイツ語に関しては最強だろう。相良は中世ドイツ語学・文学の大家。「キムラ・サガラ」と呼ばれる辞書をつくったことでも知られる。

 この『ドイツ文法』、初級文法を知らない者は近づくことさえできず、中級文法を終えたくらいではありがたみがわからないかもしれないが、すごい。ドイツ文法に関する様々な規則が、なぜそうなったか、かつてはどうだったのかといった知識を混じえて、しかし簡潔に説明されている。「ナルホド、語学というのは歴史なんだネ」「目にみえないもの、すなわち『時間』が目にみえるカタチをとったもの、それが『ことば』なのかナ」なんて自然に思えてくる。歴史的存在としての言葉。

 こうしてまとめられたすばらしい本が出ているのだから、これに書かれたことくらい、ドイツ語教師は知識として伝達できるべきだ。といってもこの本も絶版。古本で手に入る場合は、1979年の改訂版をオススメする。

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