2011年5月2日月曜日

あらたの誕生(1)

 あらたが生まれてもうすぐ一ヶ月。早いものだ。といっても生まれてからまだ6日間しか一緒に過ごしてない。まきちゃん、沼田のお母さん、どうもありがとう。特別なにかの役に立つことはないだろうけど、あらたの誕生前後のことを記録しておこう。

 妊娠を確認したのは2010年8月末。その時点で出産予定日は4月9日と言われた。死ぬまで苦しむ子供になるかな、なんて言っていた。なんといってもその後妻が何の問題も抱えなかったので、のんきにしていられたのだ。つわりなし、食べ物や匂いへの反応なし、情緒不安定化なし、体調不良なし、なんにもなし。産むまで本当に何もなかった(産んでからも順調)。ただ少しずつお腹が大きくなるだけ。12月末まで毎日自転車で仕事に通った。前から知っていたけど、あらためてずいぶん丈夫なひとだと思った(なにかいろいろ鈍感なだけかもしれない)。奥さんの体調次第で夫はまったく異なる妊娠期間を過ごすだろうと思う。

 産婦人科は、最初に行った王子の医院が気に入らなかったので、ネットであれこれ探して、日暮里の「白十字産婦人科」というところに通った。わざわざコンピューターで探して見つけたのがこれかよ、というくらい、昨今のきれいな産婦人科とは遠い町のお医者さん。なぜかラブホテルの隣。なかなか深い。しかも男の先生(50歳くらい)が、「妊婦というのは家族だけでなく社会が支えなければいけない」とか、「制度が妊婦を支援するのは当然なんだ」といった、ちょっと共産党系かなという熱い指導を(特に最初の頃に)授けてくれて、ぼくはたいへん楽しませてもらった。ちなみに、ノロウィルスに倒れていた一回を除いて、産婦人科には毎回二人で行った。無職の効用である。

 この「白十字さん」でよかったのは値段。今は妊婦の医療費補助クーポンがどの自治体からももらえる。どうも大きな病院などでは、このクーポンを出して、さらに毎回いくらか払う、というかたちになるらしいのだが、「白十字さん」では特別な検査を行わない限りクーポンだけで間に合った。つまりこっちは毎回1円もお金を払う必要がなかった。また、いつ行ってもだいたい空いていたので待ち時間もほとんどなし。きれいな大病院で待ち時間のストレスと料金の負担を受けるか、謎の町医者で適当に過ごすか。ぼくは後者でよかったと思う。

 ただし機材がどうにも古いことには閉口した。なにしろエコーもどこがなんだかよくわからない。「これ背骨ね」と言われれば「ああ背骨ですか」なんて一応返すが、まあなんだかよくわからない。もちろん性別もなかなか判明しない。里帰り出産をした群馬県沼田市の病院で診察を受けたときは衝撃だった。エコーの精度がまるで違う。新しい機器ではお腹の中にいる赤ちゃんの表情まではっきりわかるのである。これほどの差があるとは想像していなかった。ただし医者としては「白十字さん」の方が信頼できた。きれいな建物、若い医者、若い看護婦に溢れた病院は、その見せかけやもっともらしい言葉の裏で、ちょっと疑問に思うところもあったのである。 

[続く]

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