今日のニュース。
1. 浜岡原発停止「要請」、法的根拠と適正手続
池田信夫氏のツイッターで、菅総理大臣による浜岡原発停止「要請」が法的根拠のない適正手続を欠いた行為であるとして非難されている。柿沢未途・「みんなの党」衆議院議員によれば、これは「結論が喜ばしければ、法的根拠や適正手続はどうでも良いと言えるか」という問題である。浜岡原発停止「要請」を理論的に支持する者は、この批判に応えなければならない。しかし今のところこれといった主張は出てきていないようだ。
今回の首相の「要請」には、実際のところ手続き上の問題点が多い。憲法学では、「内閣総理大臣の行政各部に対する指揮監督権は、あらかじめ閣議で決定された方針に基づいて行使されなければならず、内閣総理大臣の単独の意思によってこれを行うことはできない」とされている。今回の「要請」は閣議を通していない。何らかの法律に支えられた行為でもない。にもかかわらず中部電力という一私企業に直接「要請」を出すことは、憲法22条1項によって保証されている「営業の自由」を犯している可能性がある。
たしかに、「営業の自由」は無制限に許されるものではない。無制限の職業活動を許せば、社会生活に不可欠な公共の安全と秩序の維持を脅かす事態が生じかねないからである。したがって営業の自由を制約すること自体は必ずしも憲法違反とは言えない。事実、最高裁によるそうした判例も存在する。
また、菅首相側は、「要請」には法的強制力がないのだから、法律に基づく必要も閣議にかける必要もなかったと主張するのだろう。
しかしながら、世論の現状を鑑みて今回の「要請」を正面から断ることは不可能に近く、これは実質的に法的強制力をもつと考えるべきである。
法的根拠も持たず、適正手続も踏まえずに実質的な法的強制力を一私企業に対して行使することは、明らかに内閣総理大臣の権限を超えており、憲法違反である。したがってわたしは今回の菅総理大臣の「要請」を支持することはできない。今回は「民意」に沿った結果になるからいいじゃないかと片付けてしまうと、将来に重大な悪影響を及ぼす前例になりかねないと危惧するからである。
とはいえ、わたしは浜岡原発の停止自体には賛成である。つまり、福島の惨状が明らかになった時点で動き始めていれば、現時点で法的根拠と適正手続に支えられた浜岡原発停止の方向性を打ち出すことは十分に可能だったはずであり、そうすべきだったと考えるのである。これまで2ヶ月もあったのだ。準備期間が2ヶ月もあったのに、何の根拠も手続きも踏まえない「要請」を突然発動するというのは、法治国家としてやはり正常ではない。
先日からの続きになるが、政治が場当たり的なパフォーマンスの連鎖に過ぎなくなっている。「政治の時間」、あるいは「政治という時間」をつくることができなくなっている。今回の「要請」も、今後の日本のエネルギー政策をどのように進めるのか長期的な指針を示すわけでもなく、それどころか具体的に今夏いかにして電力不足を乗り切るのかという短期的な展望さえ示されない。「国民が頑張って省エネすればなんとかなる」というのは行政の長が語るべき言葉ではない。
「政治という時間」をつくることは現在の選挙制度とマスメディアのもとではもはや望めない。インターネット上に「政治という時間」を構築し、それを現実へ反映させる手段を少しずつ整えていくしかないだろう。
参考:行政手続法 行政指導
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