2011年5月31日火曜日

演劇理論(5)

 演劇は根源的に死者と関わる。「死者とどのように付き合うか」は常に演劇の課題だった。3月11日以来、日本では多くのものが死に、福島では「埋葬できない死者」さえ生じている。「現在の都市で劇場が建設されうる唯一の場所、それは墓地である」とジャン・ジュネは書いた。演劇は3月11日以来の死者たちとどのように接するだろうか。

 民主制と死者はどのように関係するだろう。現在に影響を与えた多くのものはすでに死者だ。現在の法をつくったものはすでに死に、さらに死に続ける。民主制を支えるのは死者たちだ。死者との関係こそ民主制だ。

記念碑的な劇場――その様式はこれから見出さなくてはならないが――は、裁判所に、慰霊碑に、聖堂に、国会に、士官学校に、政庁所在地に、闇市あるいは麻薬売買の不法地帯に、天文台に等しい重要性を持たなくてはならない――そしてその機能は、同時にこれらすべてであることである。ただし、ある仕方で。つまり、墓地のなかで、あるいは、硬直し傾斜した、男根的な煙突のある焼却炉の間近でこれらすべてであること。
[ジャン・ジュネ「…という奇妙な単語」]

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