2011年4月3日(日)21時15分頃。妻から電話があった。陣痛もないのに破水し、今から病院に入院するという。
通常、破水は出産直前であることを意味する。ネットで東京都北区から群馬県沼田市へ向かう最終電車を調べたところ、21時25分に王子駅で京浜東北線に乗らなければならない。あと10分。なんの準備もせず、駅から自転車で5分の自宅。無理である。しかし毎日会社に通っているわけでもないのに出産に立ち会えなかったら、これはいよいよ救いがたいダメ夫と評される。なんとかしなければならない。なにをどうやったのかさっぱり覚えていないが、一瞬で着替え、猫たちにご飯を残し、必死に自転車を漕いで、21時25分の京浜東北線に間に合った。奇跡であった。大宮で上越新幹線に乗り換え、上毛高原駅から妻のお母さんの車に乗せてもらって、病院に着いたのは23時半くらいだったと記憶する。
翌日4月4日はわたしたち夫婦の結婚記念日だった。初産は予定日より遅れることが多いと聞くが、結婚記念日と誕生日を合わせるために4月9日から5日も早く出てくるのではないか、おそらく非常に気の利いた心優しき男児なのだ、もしかしたら生まれた瞬間に「パパ、ママ、結婚記念日おめでとう」くらい言うかもしれない、等々思ったが、そこまで器用ではなかったらしく、結局出産は5日の午前中だった。
丸一日以上時間がかかったのは、破水はしたものの、陣痛がなかなかこなかったからである。妊娠中に一度も体調を崩さなかったことを考え合わせると、よほど鈍感なからだなのだろう。4月4日(月)はてきとうに飲み食いしたり病院の部屋(全て個室)のDVDで織田裕二の『アマルフィ』(ほとんどアマルフィの出てこない謎の映画)を見たりして、謎の一日を過ごした。
5日(火)の朝になってもたいして陣痛が強まらないので、結局は「陣痛促進剤」なるものを投与してもらった。その効き目たるやすさまじく、投与から約2時間で「あらた」は誕生した。その経緯はまた次回。
[続く]
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